ー 知的障害者の経済的自立を目指して ー


                               
特定非営利活動法人 もやいの会

知的障害者が保護者に依存しない収入を月額15万円程度確保することができ、また「働く喜び」を感じることができる「仕事場」が強く求められております。

目次
1.知的障害者が自立する  とは何か?
2.当たり前の暮らしをするためには
3.現状は
4.制度の改革
5.もやい会は、知的障害者の経済的自立を支援します
6.もやいの会「まめ道場」の事業  豆腐販売製造
7.もやいの会「まめ道場」の賃金
8.今後の課題 ー 「委・職・住」 ー
9.もやいの会が 目指す社会について

1.知的障害者が自立するとは何か?
誤解を恐れずに言えば、知的障害者が地域で「当たり前の暮らしをする」ことです。
その地域で暮らしている大部分の人にとって「当たり前のこと」は、誰にとっても、当然障害者にとっても、「当たり前のこと」でなくてはならないと考えています。
2. 当たり前の暮らしをするためには
(1)働く
働くことは人間の根源的活動のひとつです。
大部分の人は、「仕事をする」・「働く」ことがその生活の中に大きな位置を占めているとともに「誇り」「喜び」を感じています(する事が何も無く、無為に時間を過ごすことは大変辛いことです)。
知的障害者も同じです。彼らにも「誇り」や「喜び」を感じる事が出来る「仕事」が必要です。
(2)自分の生活費は自分で調達する
大部分の成人は、自分の生活費を自分で獲得しています。
大部分の成人知的障害者は、その経済面を親(保護者)に依存しています。
親に依存しない自らの収入を最低でも月額15万円確保する必要があります。
(3)親から独立して生活する
全ての動物は一定の時期に親と別れて独立して生活を始めます。
人間も例外ではありません。知的障害者も例外ではありません(年齢で一律に考えるのは危険ですが)。
住み慣れた地域で親から独立して生活するにはグループホームが必要となります。
3.現状
(1) 知的障害が有り、働きたくても一般企業での就労が困難な18歳以上の方が大勢います。
(2)知的障害者は、授産施設・共同作業所を利用しています。
法律上の「授産施設」は、都道府県・市町村・社会福祉法人が設立した一定の基準を満たすもので、利用希望者数に対して極めて少なく、利用できないのが現状です。
それを補う共同作業所(法定の小規模作業所を含む)は全国に6,000以上あるといわれていますが、「仕事をする」・「経済的自立を目指す」ことを運営の柱としている所は殆どありません。
(3)知的障害者福祉法で定める「授産施設」は
「知的障害者授産施設は、十八歳以上の知的障害者であつて雇用されることが困難なものを入所させて、自活に必要な訓練を行うとともに、職業を与えて自活させることを目的とする施設とする。」と定義されています。しかしながら、職業を与えて自活させることの部分はまったく忘れ去られています。
市行政もあまり感心が無いようです。
(4)障害者年金、その他の給付
成人知的障害者には月額約8万円程度の障害者年金、市区町村からの給付金があります。
(5)知的障害者のその他の収入
知的障害者が授産施設(小規模作業所、その他の共同作業所を含む)を利用し、そこで行われる作業に対して利益分配として工賃が支払われます。
授産施設が事業収入を得て利用者により多くの賃金を払うことに努力が不足している結果として、工賃月額の平均は5,000円以下と言われています。この水準で実態として相場らしきものがあります。
国、都道府県、市区町村が負担する社会保障費用は、施設の運営費(大部分は人件費)であり、知的障害者が自活するための費用とはなりません。
(6) その結果、大多数の知的障害者は経済面を保護者により維持されています。
(7) 保護者が加齢・死亡した場合、自力で解決できない困難な問題に直面します。
結果として、東京の場合は、地方の施設に収容する「措置」が行われます。
東京では子供の知的障害者はよく見掛けますが、成人の障害者が少ないのはこのためと思われます。
4.制度の改革
(1)福祉基礎構造改革
平成12年から15年にかけて実施されてきました。

目指したところは
・措置から利用制度へ 利用者とサービス提供者の対等な関係
・支援費制度の導入 施設による代理収納制度
・利用者自らによるサービスの選択
・多様な事業者の参入促進
・事業者間の活発なサービス競争
・共同作業所の法定化 設立条件の緩和  小規模作業所


これにより知的障害者本人を取り巻く状況はどう変わったのでしょうか?
状況はまったく変わっていません。
・サービスの選択           選択できるほどサービスは多様でない
・対等な関係               サービス提供者の不足により対等と言い難い
・支援費制度 支援費と言いつつ利用者の手に渡らず施設が代理収納し、従来の制度と実質的に変わっていない
・多様な事業者の参入促進                                                   施設数は足りていると、むしろ参入を抑制している。また、法定化に向け共同作業所の合併・統合が進み、サービスの多様化も阻害されている。
・事業者間のサービス競争 サービス競争はない
(2)障害者自立支援法の成立と施行
平成18年4月1日に障害者自立支援法が施行されました。

目指したところは
年齢、障害種別、疾病を越えた障害保健福祉施策の総合化
保護中心の仕組みから障害者のニーズと適性に応じた自立支援への転換制度の持続可能性の確保とされています。

それまでの支援費制度や精神保健福祉制度は制度の維持管理する仕組みが極めて脆弱であり、必要なサービスを確保するためには、給付の重点化・公平化、制度の効率化・透明化を図る抜本的な見直しが不可欠であるとして、これまでの支援費制度、育成医療・更生医療・精神障害者通院公費の三つの公費負担医療制度に換わる新たな制度として「障害者自立支援法案」が国会に提出され、可決成立しました。

この法律は、障害保健福祉施策の総合化による効率化で財源不足を補うところに最大の狙いがありますが、「障害者のニーズと適性に応じた自立支援への転換」の考え方は評価できるものと思います。

これにより、支援費対象の授産施設は就業移行支援事業・就労継続支援事業を行う事業者となり、補助金対象の小規模作業所、その他の作業所は市区町村の行う地域生活支援事業を行う事業者となります。

利用者は利用料の1割を負担することになります。利用料は家族の収入の合計によって決められますが、「自立を支援する法律」が成人利用者の「家族の収入」によって利用料を決めるという自己矛盾を起こしています。

事業者は利用者から「利用料」を頂くことになるため、「日中、利用者を預かっていれば良い」という保育園的内容ではなく、就労移行支援事業、就労継続支援事業、地域生活支援事業に相応しい内容のサービスを提供する義務があり、その面では利用者にとって良いことなのでしょう。
5.もやいの会は、知的障害者の経済的自立を支援します
(1)「仕事をする」ことを生活の中心に据えています
「NPO法人もやいの会 まめ道場」では、考え方の出発点を「彼らは何も出来ない」ではなく、「彼らは何でも出来る。ただ不得意なことが少しあるだけ」としています。
しかし世間では知的障害者が仕事をするのは無理と考える人がいます。

「仕事をする」ことができるように、仕事の手順・事前の準備等環境を整え、利用者個々の状態を勘案しつつ、能力を発揮できるようにすることが「NPO法人もやいの会 まめ道場」の本来の役割であると考えています。
知的障害者は「仕事の喜び」なんか感じないと考えている人もいます。
単純な反復的仕事をしているのでは「何のために」「何をしている」のかを理解できません。
喜びを感じないのは当たり前です。仕事の全体は「何をしようとしているのか」、その中で「今は何をしているのか」を理解できるように、眼で確認できるような工夫をする努力をしています。(一人一人に対して個別の工夫が必要となります。)
(2)市場競争力のある商品を作ります
障害者施設の製造する商品には、ある種の偏見と誤解が付きまとっています。
施設側にはある種の甘えがあり、買い手側には甘やかしがあります。
お付き合いやお情けで買って頂くのは、障害者の自立の妨げとなります。
一般の市場で、「この商品は良い」と評価されるものを作ることが必要です。
(3) 「まめ道場」は「作業所」ではありません。知的障害者の「仕事の場」です。
(4)「もやいの会」とは
「もやい」は、2つの意味があります。
「催合」と書いて、「共同で 〜を所有する」こと、「共同で 〜をする」こと、「舫」と書いて、船を桟橋に係留することです。
利用者が、「現在暮らしている地域にもやい (舫)をし、利用者・職員・会員・その他の支援者が、もやい(共同)で仕事をする」ことから「もやいの会」と致しました。
6.もやいの会「まめ道場」の事業
(1)市場が無限にある商品
(2)過大な設備投資を必要としない事業
(3)弱小事業者でも勝負できる事業
(4)豆腐・関連商品の製造販売を行う事としました
豆腐製造業者は殆どが小事業者 → 我々にもできる
豆腐市場は2極化している → 価格重視型豆腐 VS こだわり豆腐
初期費用については、頑張れば何とかなると判断しました。
(5)手作りのこだわり豆腐
国産一級品の大豆だけを使用し、凝固剤として粗製海水塩化マグネシュウム(にがり)
「塩田にがり」を使用した豆腐を造っています。
(6)利用者の仕事
利用者は豆腐製造の全ての工程に参加しています。
豆乳へにがりを入れる作業も行っています。
7.もやいの会「まめ道場」の賃金
(1)利用開始時誰でも 35,000円でスタートします
(2)利用開始時18歳の場合
10年後の28歳時点で70,000円とします(標準の賃金)
(3)利用開始時18歳以上の場合
5年間で標準の賃金に追いつく事としています
(4) 28歳の時点で、障害者年金等と合わせて月額150,000円の収入となります
8.今後の課題 ― 「委・職・住」 ―
(1) グループホームの設立を計画
(2) 「住」は従来の「衣・食・住」全体と捉えています
グループホームは「衣・食・住」の確保を行います。
(3) 「委」は権利の擁護、健康の維持について、「特別な資格者」の協力を意味しています。
(4) 「職」は「まめ道場で」実現しました
(5) 知的障害者の老後
知的障害者にも老後があります。
老後の収入の確保が課題です。
障害者年金だけでは生活できません。
9 もやいの会が目指す社会について
まめ道場」の利用対象者である知的障害者が活き活きとして、その人らしく生活できるのはどのような社会であるのかを考えてみました。

まず「障害者」という呼称は彼らにとって必要なのでしょうか?

誰であっても「不得意なこと」はあるものですが、特定のことが不得意であると「障害者」と呼ばれます。
この呼称は、社会の中で「通常の対応」が対応困難な人たちに対して「特別扱い」をするために、または、「通常の対応」から「排除」するために用意された「区分」で、本人が必要としているのではなく、「周りの人・組織」にとって必要な「区分」と言えます。
人々の多様性を嫌う未成熟な社会の産物なのでしょうか?

人は年齢を重ねれば誰でも「不得意なこと」が増えます。身体に故障が生じ、認知症にもなります。それでもお年寄りを「障害者」と呼ぶ人はあまり居ません。何故でしょうか?

「障害者」にとって理想的な社会は、「障害者」という言葉・概念が無い社会ではないでしょうか。
人は場面場面によって「助けられたり」、「助けたり」だと思います。
今「障害者」といわれる人達が「助けたり」の立場になることは少なくないと思っています。

落語にはよく「与太郎」という人が出てきます。彼は、今で言う「知的障害者」ではないでしょうか?
長屋では、「八さん」も、「熊さん」も、「ご隠居さん」も、「与太郎」を「知的障害者」として対応していません。ご近所の仲間として、彼の生活が成り立つように気を配りながら暮らしています。
「与太郎」は、とても生き生きとして(失敗ばかりして)暮らしています。
少なくても、落語の世界ではそのような「区分」は存在しません。

現在の社会は、法律、政省令、通達、条例、要綱、等ありとあらゆるところに「障害者」という差別的記述が存在します。
行政は、これを障害者の保護のためと言います。
一面ではそのとおりであると思いますが、やはり「通常の対応」ではなく「特別扱い」をするために「行政の立場」、「事業者の立場」を主張したものに過ぎません。

もやいの会は「障害者」という言葉・概念が無い社会を目指し、「特別扱い」が「特別」ではなく、遍く「通常の扱い」となる社会が必ず到来することを信じています。

「障害」を「障がい」と表記する運動があるようですが、表記を変えることによって、彼らにとって何が改善されたのでしょうか?
「害」の字のイメージが良くないからと聞いていますが、「障」の字は「差し障る」の意味でありこの字は何で漢字のままなのでしょうか?
もやいの会は、表記だけを変えるこの運動には参加しないこととしています。
「不得意なこと」が多い人でも、「特別扱い」されなくても「当たり前の暮らし」ができるような社会を目指して努力してまいります。